説教
三位一体の主日(C年 2025/6/15)
ヨハネ16:12−15
今日は三位一体の主日です。三位一体とは、「神さまは唯一のお方ですが、父、子、聖霊という三つの位格において存在しておられる」という神秘です。三つの位格は区別されますが、切り放されず、完全に唯一のお方です。人間の考えを超えるこの神秘を、私たちは信仰と体験を通して深めていきます。
神さまの愛を知る道は、親の愛を知っていく道と似ています。子供は初めは親の愛をすべて理解できません。でも、時が経ち、人生の中で少しずつ親の愛や犠牲を理解するようになります。神さまも同じです。信仰に生きる中で、信仰の歩みの中で、神さまの恵みと愛を体験しながら、私たちはその深さを知っていきます。
三位一体の本質は「愛」です。父は子にすべてを与え、子は父を愛し従います。その完全な愛の流れが聖霊です。今日の福音にも、父、子、聖霊が互いに与え合い、一つになる愛が示されています。この愛は私たちにも開かれていて、神さまは私たちを愛の共同体に招いてくださっています。
神さまは遠い存在ではありません。私たちのそばに来て、愛の関係を結びたいと望んでおられます。私たちもこの愛と一致の中で生きることが求められています。
人間も一人では完全にはなれません。愛と関係の中で成長し、自己を形づくっていきます。愛は、互いに与え合い、一致する中で深まります。
マザー・テレサ シスターがアメリカを訪問された時、一人の美しい女性が「人生がとても退屈で、生きる意味を感じられません。いっそ死んでしまいたいです」と悩みを打ち明けました。するとマザー・テレサは「私のいるところに来てくだされば、本当の命をお渡しします。死ぬ前に一度ぜひ訪ねてください」と言い、インドに戻られました。その女性はインドを訪れ、修道院で忙しく働くシスターたちを見て、自然に食事の準備や床掃除、病人のお世話を手伝いました。しばらくしてマザー・テレサが「何に悩んでおられましたか?」と尋ねると、女性は「もう悩みはありません。『本当の命をお渡しします』という意味が今分かりました」と答えました。彼女は、隣人のために助け、奉仕する愛の行為の中に、人生の本当の意味を見つけたのです。
神さまは「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。」と言われ、私たちを三位一体的な愛を生きる存在として創造されました。私たちも、愛と分かち合いの中で完成していきます。
三位一体の神秘は単なる教理(カテキズム)ではなく、私たちの生活の中で実現されるべき生き方です。家族や共同体の中で、親子、夫婦、隣人との関係に三位一体的な愛と一致があるかを見つめ直しましょう。
今週一週間、三位一体の神さまの愛と恵みを心に深く思い、私たちもその愛に倣って、家族や隣人と共に愛と一致を生きる毎日を過ごしていきましょう。
カトリック上福岡教会 協力司祭 イ・テヒ神父